本番を迎えた「金利ある世界」~ 貸出金利1%を巡る攻防 ~
2024年3月、日本銀行が8年ぶりにマイナス金利政策を解除した。その後の2024年7月、2025年1月と相次いで政策金利を引き上げた。ただ、金融機関は政策金利の引き上げを見越し、ひと足早く預金金利と貸出金利の引き上げに動き出している。
日銀の利率別貸出金残高をみると、金利引き上げがすでに加速していることがわかる。
直近の2024年12月と前年度の2024年3月を比べると、0.50%未満は18.7%(2024年3月33.1%)で14.4ポイント縮小している。また、0.50%以上1.00%未満は43.4%(同38.1%)、1.00%以上1.50%未満は22.5%(同16.1%)、1.50%以上2.00%未満は7.9%(同6.3%)と、それぞれ拡大。金融機関の姿勢が、低金利から「金利ある世界」に舵を切ったことが鮮明になっている。
ことし1月の政策金利の引き上げで、貸出金利の追加利上げも現実味を帯びている。だが、ここにきて企業向け貸出金利の一斉引き上げを懸念する金融機関も出てきた。というのも、金融機関は業績が厳しい取引先の金利は先行して引き上げており、これ以上の金利上昇は倒産を促す可能性があるためだ。取引先によっては金利引き上げ交渉を留保するケースも出ているという。債務者区分と金利の調整期間に入ったともいえる。
今後、金融機関と経営内容に問題のない優良先との間で、貸出金利「1%」の攻防が幕を開けることになる。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年2月19日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)