市場拡大も競合・コスト高でネット通販の苦戦が鮮明 「無店舗小売業」の倒産、休廃業・解散は過去最多
2024年(1-12月)「無店舗小売業」動向調査
コロナ禍で急成長したインターネット通販などの「無店舗小売業」の倒産が急増している。2024年の倒産は169件(前年比45.6%増)で、前年から約1.5倍に増え、過去最多を記録した。
また、「休廃業・解散」も、261件(同21.3%増)と前年の1.2倍に増え、最多を記録した。倒産と休廃業・解散の合計は430件(同29.9%増)で、過去最多だった前年(331件)を99件上回った。
ネット販売が定着し、EC(電子商取引)市場は拡大の一途をたどっている。従来、店舗とオンライン販売の併設が中心だったが、近年は店舗を一切持たないネット専業の業態も目立ってきた。ネット専業は出店に伴う初期投資や人員などの店舗運営コストを抑制でき、小資本での参入が可能だ。オンライン上での販売のため、営業エリアや時間を限定しない販売スタイルも大きなメリットになっている。しかし、その一方で、参入障壁が低く、異業種からも事業者が増加しており、過当競争で市場からの撤退を余儀なくされる企業も急増している。
ネット通販を中心とする「無店舗小売業」の倒産は、負債規模が5千万円未満が130件と約8割(76.9%)を占めている。負債5億円以上はなく、従業員数も5人未満が153件(90.5%)と9割を占めた。
また、設立10年以内の倒産が全体の6割以上(64.2%)を占めた。無店舗小売業の倒産は、小規模で業歴の浅い新興企業に集中している点が大きな特徴といえる。
価格で優位に立つ大手への対抗には、商品開発力や品揃え、イメージ戦略による差別化を通じ、消費者に選ばれる仕掛けづくりが不可欠となる。市場の競合が激しさを増すなか、付加価値の提供が難しい小・零細規模の企業を中心に、無店舗小売業者の淘汰が加速する可能性が高い。
※本調査は、日本産業分類の「無店舗小売業」の2024年(1-12月)の倒産を集計、分析した。
倒産169件、休廃業・解散261件、合計は10年で3.5倍増
「無店舗小売業」の倒産は169件(前年比45.6%増)で、前年から約1.5倍に増えて過去最多を記録した。コロナ禍の巣ごもり需要や資金繰り支援で、倒産が減少した2021年(68件)を底に、倒産は増加をたどっている。
また、休廃業・解散も倒産とほぼ同じ推移をたどり、2024年は261件(同21.3%増)で最多を更新した。
新規参入が相次ぎ、市場自体は拡大しているが、近年は仕入コストや配送などの物流コストが上昇し、採算確保が難しくなっている。こうした状況を背景に、倒産と休廃業・解散はいずれも増勢を強めており、市場から退出した企業は10年間で3.5倍に増加した。
負債額別 小規模に集中 負債5億円以上は発生なし
負債額別では、「1千万円以上5千万円未満」が130件(構成比76.9%、前年比51.1%増)で約8割近くを占めた。次いで、「1億円以上5億円未満」が20件(同11.8%、同150.0%増)、「5千万円以上1億円未満」が19件(同11.2%、同5.5%増)と続く。負債5億円以上の倒産は発生がなく、ほとんどが小・零細規模のレンジに集中している。
2024年の無店舗小売業の倒産で最大は(株)トリプルアート(東京都、破産)の4億8,000万円だった。中国向け越境ECサイト「masadora(マサドラ)」を運営、日本のアニメやコミック、ゲームなどのキャラクターグッズを販売、事業を拡大していたが、コロナ禍や採算低迷で経営が悪化していた。債権者(約1万5,000人)は、商品を購入した中国在住の個人客が中心だった。
設立年別 2010年以降設立が7割超え
2024年の無店舗小売業の倒産169件のうち、設立年が判明した151件を分類した。
設立年代別の最多は「2010年~2019年」で、構成比50.3%と全体の半数。次いで「2020年以降」が22.5%、「2000年~2009年」が19.2%、「1990年代以前」が7.9%と続く。
2010年以降に設立された新興企業が7割以上(72.8%)を占め、このうち2014年以降に設立された業歴10年以内の企業も64.2%だった。
市場拡大の波に乗って新規参入を図ったものの、販売不振などから事業が軌道に乗らなかったケースが多数を占めている。
一方、最も古い設立は1953年で、業歴70年超えのアクセサリー販売会社。装身具の問屋として創業したが、近年は店舗を持たずオンライン販売を主力としていた。