朝日出版社 M&A騒動は収束 NOVA HDが全株式を取得
NOVAホールディングス(株)(TSR企業コード:402342399、品川区、以下NOVA社)は2月17日、2月14日付で語学書や教材出版を手掛ける(株)朝日出版社(TSR企業コード:291344682、千代田区)の全株式を取得したと発表した。朝日出版社を巡っては、2024年10月21日にホームページに「朝日出版社経営陣からM&Aについて緊急のお知らせ」とのリリースを突如掲載して、注目を集めていた。
今回のM&A騒動は、2023年4月に朝日出版社の創業者である会長が死去し、創業者が有していた朝日出版社の株式100%を遺族の2名が相続したことに端を発した。その後、2024年9月11日、株主となった遺族により代表取締役を含む取締役6名全員が解任され、同日、遺族2名を含む新たな取締役3名が選任された。また、遺族から株式の買い手候補だった合同会社戸田事務所(TSR企業コード: 130021377、千代田区)と朝日出版社が経営方針をめぐる意見の相違も表面化した。
同年12月には、朝日出版社に対し、解任された代表取締役を含む取締役らを原告とした株主総会決議不存在確認等に関する訴訟を提起するなど経営も混乱していた。
朝日出版社の今後
NOVA社によると、今後の朝日出版社の経営体制は、NOVA社の代表取締役社長である稲吉正樹氏が朝日出版社の代表取締役会長に就任。解任されていた朝日出版社の小川洋一郎氏(朝日出版社の元代表取締役社長)は取締役社長に就任する。朝日出版社の取締役は定年者を除いて全員復帰し、取締役数はNOVA社兼任者が6名、朝日出版社側が5名となる。
朝日出版社に復帰した小川社長は、東京商工リサーチ(TSR)の取材に対し、「朝日出版社を被告とした株主総会決議不存在確認等に関する訴訟も取下げ、M&A騒動は収束した。従業員にも安心して働いてもらえる環境が整えられ、これまで支えてくれた方に感謝したい。今回のNOVA社の株式買収で朝日出版社の可能性は広がる」とコメントした。
また、NOVA社の稲吉正樹社長は、「電子化等の投資を進めることで更に良い会社に成長していくと確信している。出版社の事業性を失わないように独立性の維持には配慮したい」とコメントした。
遺族から株式の買い手候補だった戸田事務所の戸田学代表は、TSRに対して「取引の成就は難しいと判断して契約の解除に応じた。今回の朝日出版社のM&A騒動は収束した」とコメントした。
朝日出版社の本社
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年2月20日号掲載「取材の周辺」を再編集)