2024年の医療機関の倒産が過去20年で最多 クリニック、歯科医院が押し上げ、病院も3.5倍増
2024年「医療機関」の倒産、休廃業・解散調査
2024年の病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの医療機関の倒産は64件(前年比56.0%増)で過去20年で最多件数を更新した。また、休廃業・解散は598件(同14.1%増)で、2016年(663件)、2017年(617件)に次ぐ、3番目の水準だった。
倒産は、クリニック、歯科医院が件数を押し上げたが、ベッド数20床以上の病院も前年比3.5倍増と大幅に増えた。休廃業・解散は、クリニックが6割(60.3%)、歯科医院が2割(23.0%)を占め、小規模な医療機関での閉院が加速している。倒産と休廃業・解散の合計は662件(前年比17.1%増)に達し、過去20年で2番目の高水準となった。
倒産の業態別では、クリニックが32件(前年23件)、歯科医院が25件(同16件)で、いずれも前年を上回った。クリニックは過去20年で最多、歯科医院も過去最多だった2018年と同件数で、クリニックと歯科医院が倒産を押し上げた。また、20床以上の入院設備を備える大きな病院でも7件(同2件)発生し、前年の3.5倍に急増した。
休廃業・解散は、病院が99件(同78件)、クリニックが361件(同327件)、歯科医院が138件(119件)と、すべての業態で前年を上回った。コロナ禍を経て、コスト上昇、人員不足と人件費の上昇で、医療機関が苦境に立たされている状況が鮮明になっている。
2024年の最大の倒産は、医療脱毛サロン「アリシアクリニック」経営の(医)社団美実会(東京)が負債72億9,500万円を抱えて破産を申請した。また、審美歯科医院経営の高橋デンタルオフィス(千葉)は負債19億円を抱えて破産を申請した。医療機関の倒産は、負債の大型化に加え、美容系の医療機関の倒産が目立った。さらに、2025年に入ると、(医)福慈会(三重、負債66億7,900万円)、(医)和伸会(愛知、負債30億8,789万円)など、病院の大型倒産が相次いでいる。
病院やクリニック、歯科医院は、人口(患者)減、経営者の高齢化、人材不足、医療設備の老朽化、(患者の)実質賃金の目減りなど、複合的な課題が幾重にも重なっている。加えて、最近は電気代や人件費、各種備品代などのコストアップが収益を圧迫。コストと診療報酬との微妙なバランスが崩れると、採算の悪化から倒産や休廃業が一気に加速しかねない。
病院・歯科医院の存在感は、少子高齢化が進む地方ほど重く、地域医療の根幹に関わる事態が進行している。今夏には独立行政法人福祉医療機構(WAM)のゼロゼロ融資の返済開始がピークを迎える。返済原資を確保できず、市場から撤退する医療機関が増勢を強める可能性も出てきた。
※本調査は、日本標準産業分類の「病院」「一般診療所」「歯科診療所」から2024年の負債1,000万円以上の倒産、および「休廃業・解散」を集計、分析した。