(株)安愚楽牧場(那須塩原市埼玉2-37、登記上:那須郡那須町高久丙1796、設立昭和56年12月、資本金3000万円、三ヶ尻久美子社長、従業員514名)は、8月9日東京地裁に民事再生法の適用を申請した。監督委員には渡邊顯弁護士(成和明哲法律事務所、東京都港区虎ノ門4-3-1、電話03-5405-4080)が選任された。負債総額は債権者7万4798人に対して4330億8300万円。
同社は、共済方式による牧場経営を行い、和牛オーナー制度(繁殖牛のオーナーを募集し、生まれた仔牛を買い取るシステム)で資金調達する独自のビジネス手法を開発した。超低金利の続く経済環境の中、「高利回り金融商品」の一つとして一般投資家に注目され、事業規模は拡大を続け、会員数は全国各地で7万人を数えた。北海道から沖縄までの全国40カ所に自社牧場を運営するほか、預託先牧場は全国に338カ所あり、黒毛和種牛牧場として国内最大規模を誇り、平成23年3月期売上高は1027億2394万円と初の1000億円超と業績を伸ばした。
しかし、平成22年に発生した口蹄疫問題では、宮崎県内の牧場で症状が発生した牛が発見され、最終的に約15000頭が殺処分された。また、東日本大震災に伴う福島第1原発の放射能漏れ事故による、対象地区での牛の放牧制限、放射性セシウムの検出による福島県産牛肉の出荷制限等があり、また風評被害から牛肉消費が落ち込み市場価格が急落したため、出荷を見合わせる事態に至った。
民事再生申立書によると、同社が行う黒毛和種委託オーナー制度のもと、飼養契約期間満了時に牛の再売買が予定されており、再売買代金債務は黒毛和種牛10万6343頭に対して、4076億605万円となる。また、再売買の目的となる飼育中の牛は、安愚楽牧場の所有物ではないため、再売買代金債務と牛は決算書上に表示されていない。これを加味した上で貸借対照表を作成した場合、牛の現在価値が1頭あたり数十万円になることから大幅な債務超過状態となる。
(株)SFコーポレーション(横浜市港北区新横浜2-5-14、設立昭和50年1月、資本金10億2000万円、日置真社長)は、8月26日東京地裁から破産手続開始決定を受けた。破産管財人は鈴木銀治郎弁護士(隼あすか法律事務所、東京都千代田区霞が関3-2-5霞が関ビル4F、電話03-3595-7070)が選任された。負債総額は1897億円。
同社は、長年「三和ファイナンス」の名称で消費者金融業を営み、一時は日本国内に400店舗以上を構えて営業収入が400億円超を計上するなど準大手の地位を築いた。しかし、平成19年に違法取り立てにより業務停止命令を受けたことや、グレーゾーン金利問題から経営環境が悪化した。このため同20年9月には、かざかファイナンス(株)(現:ネオラインキャピタル(株))の傘下に入り資金的支援を受けていた。
だがこの数年は、債権者から過払い金返還請求権による破産申請が相次ぐなどの厳しい経営となっていた。
(株)林原(岡山市北区下石井1-2-3、設立昭和7年7月、資本金1億円、林原健社長、従業員280名)と関連会社の(株)林原生物化学研究所(同所、設立昭和45年9月、資本金5000万円、同代表、従業員255名)、(株)林原商事(同所、設立昭和37年4月、資本金1000万円、同代表、従業員100名)は、2月2日東京地裁に会社更生法の適用を申請した。
保全管理人には松嶋英機弁護士(西村あさひ法律事務所、港区赤坂1-12-32、電話03-5562-8500)が選任された。
負債総額は(株)林原が1322億円7100万円、(株)林原生物化学研究所が636億6500万円、(株)林原商事が368億6700万円。岡山県内では過去最大の大型倒産となった。
(株)林原は、麦芽水飴製造業として創業。その後、酵素を利用した機能性糖質を主力とする食品原料メーカーとして研究開発型の独自路線を歩み、全国有数のバイオ関連企業に成長。主力のトレハロースなど機能性糖質の研究から用途を拡大し、菓子・製パン・化粧品業界から医薬品、健康食品等幅広い分野に需要を広げ、高額所得法人の常連として高収益をあげていた。
また、(株)林原生物化学研究所、(株)林原商事、太陽殖産(株)を中心にコアグループを形成。微生物・酵素・生命化学・感光色素・バイオ関連などの研究開発を進め、インターフェロンや人工甘味料、バイオ製品など、海外法人を含めたマネジメントグループを通じ供給していた。さらに、林原美術館などメセナ事業にも積極的に取り組んできた。
しかし、研究開発費用が負担になる一方、本業の業績も伸び悩み、多額の借入金が経営を圧迫し借入に依存した無理な経営が続いていた。このため、関連子会社をM&Aにより相次いで売却するとともに、平成21年6月にはトレハロース専用工場を建設して本業に注力していた。
ところが創業以来、同族経営で外部チェックが入りにくかったうえ、経営内容を秘匿し融資を引き出しやすくするため長年、不正経理を続けていたことが発覚。このため資金の新規調達が難しくなり、過剰債務を抱えたままでの経営再建は不可能と判断、事業再生ADR手続で再建を目指した。こうした一方で、金融機関が本社や工場等の不動産への抵当権設定に動き、調整は困難とする見方も広がっていた。
太陽殖産(株)(岡山市北区下石井1-2-3、設立昭和21年12月、資本金2400万円、福田惠温社長、従業員20名)は、5月25日東京地裁に会社更生法の適用を申請した。更生管財人には松嶋英機弁護士(西村あさひ法律事務所、港区赤坂1-12-32アーク森ビル、電話03-5562-8500)が選任された。負債総額は保証債務、関係会社間取引を含め、417億5800万円。
同社は、バイオ事業等を展開する林原グループの1社で、土地の有効活用や地域開発、自社及びグループ会社名義で有する全国各地のビル、ホテル、駐車場等の賃貸管理といったグループ全体の不動産関連業務を主体に保険代理等も行い、最近は10~11億円の年商を計上していた。
平成23年1月に同社と(株)林原、(株)林原生物化学研究所、(株)林原商事のグループ4社が事業再生ADR手続の利用を申請したが、2月2日これを取り下げて林原、林原生物化学研究所、林原商事が会社更生法の適用を申請し、太陽殖産は債務超過状態にないとの理由で除外された。
しかし3社の更生手続が進められる中、太陽殖産としても一部所有不動産売却等による負債圧縮を図っていたが、グループ企業間での資金貸借や保証等もあり、グループの一体的な事業の再建・再構築には太陽殖産も含めた会社更生手続による再建計画立案が必要と判断した。
(株)ゆたか環境緑化(土浦市沖宿町3476、設立平成9年6月、資本金3000万円、加藤一夫社長、従業員37名)は、12月7日東京地裁に破産を申請した。破産管財人は桑島英美弁護士(坂井・三村・相澤法律事務所、東京都港区虎ノ門4-13-13神谷町セントラルプレイス4階、電話03-6721-3111)。債権者はメンバーを中心に約7500名で、負債総額は414億9500万円。
同社は、ゴルフ場「ホワイトバーチカントリークラブ」の運営会社で、同ゴルフ場は所有企業からコースの賃貸契約を結び営業を行ってきた。しかし、経済環境の悪化等によるゴルフ人口の減少や、同業ゴルフ場との競争激化により来場者数が伸び悩み資金繰りも悪化、賃借料の遅延が発生した。このため、ゴルフ場の所有企業が水戸地裁に対し明け渡し請求訴訟を提起して請求容認判決を取得、同判決に基づき強制執行の申立を行ったことから12月5日に営業を停止、今回の措置となった。
陸山会事件で注目されていた水谷建設(株)(桑名市大字蛎塚新田328、設立昭和35年12月、資本金1億4550万円、水谷正之社長、従業員354名)は、12月31日大阪地裁から会社更生開始決定を受けた。12月1日、元社長で8月22日付けで解任された水谷紀夫氏から大阪地裁へ会社更生法の適用を申し立てられ、12月1日に同地裁から保全管理命令が下っていた。
これに対し、水谷建設は水谷正之社長名で大阪高裁に対し保全命令の取り消しを求めて即時抗告を行っていたが、同高裁は12月27日、「水谷一族の内紛問題であり、一族が経営者や株主であることは取引先にとって望ましくない」とし、抗告棄却を決定したことから更生手続が進められていた。
更生管財人は天野勝介弁護士(北浜法律事務所、大阪市中央区北浜1-8-16、電話06-6202-1099)ほか。負債総額は金融機関16社を含めた債権者約500名に対し約353億円。
同社は昭和8年1月創業で、重機械土木工事では国内大手の1社。大手ゼネコンと共同受注や下請けでダムや橋梁工事を手がけ、ピークの平成15年8月期の完工高453億7800万円を計上していた。最近はアルジェリアの高速道路建設、スリランカの道路工事など海外にも進出し、同22年8月期の海外売上高比率は約56%を占めていた。
こうした一方で、政治家との繋がりも噂され、小沢一郎民主党元代表の資金管理団体・陸山会をめぐる政治資金規正法違反事件で、水谷建設から陸山会へ約1億円の裏献金が渡った疑惑でも注目されていた。
(株)福岡センチユリーゴルフクラブ(福岡市中央区赤坂1-14-22、設立昭和62年5月、資本金7000万円、代表取締役:上杉昌也氏ほか1名、従業員64名)と関連の(株)創栄(朝倉市柿原1321-11、設立平成7年4月、資本金1000万円、代表取締役:櫻井良正氏、従業員25名)は6月23日、福岡地裁に民事再生法の適用を申請した。監督委員は中山英治弁護士(不二法律事務所、福岡市中央区薬院1-16-20、電話092-712-2305)が選任された。
負債総額は(株)福岡センチユリーゴルフクラブが約343億円(内預託金約270億円)、関連会社の(株)創栄が85億円。
(株)福岡センチユリーゴルフクラブは、福岡センチュリーゴルフクラブ(福岡県朝倉市)の運営を目的に設立し、平成2年に同ゴルフ場をオープン。国内初の20ホール(パー80)スタイルのゴルフ場で、隣接するホテル、コンベンションホールなどの運営を手がけていた。日本女子プロツアーのフンドーキンレディースや日韓女子プロゴルフ対抗戦に利用されるなど、地場有数の名門ゴルフクラブとして知名度の浸透とともに会員数を伸ばし、同5年3月期売上高は17億4768万円、当期利益は733万円を計上していた。
こうした一方で平成12年にゴルフ会員権の償還を迎えるにあたり、大手飲食店チェーンの関連会社の支援を受け、乗り切った経緯がある。その後も景気低迷のなか、業績は振るわず、預託金返還請求訴訟が相次ぎ、資金的に厳しい状況が続いていた。
丸和商事(株)(掛川市駅前1-9、設立昭和31年2月、資本金10億105万円、藤澤勝社長、従業員85名)は、4月8日東京地裁に民事再生法の適用を申請した。監督委員には池田靖弁護士(三宅・今井・池田法律事務所、東京都新宿区新宿1-8-5新宿御苑室町ビル5階、電話03-3356-5251)が選任された。負債総額は約336億円(平成22年3月末時点)。
同社は、消費者金融業者として関東・中部地区に「ニコニコクレジット」7店舗、また、女性スタッフにより運営される女性専用「アイリス」、ネットキャッシング「e―NIKO」等を経営し、ピーク時の平成18年3月期には営業収入152億9114万円を計上した。
しかし、時を同じくして旧貸金業法第43条のみなし弁済要件を厳格に解する平成18年1月の最高裁判決を契機として、利息制限法所定利率を超過した利息の返還を求める請求が増加したことから、収益が大きく圧迫された。その後も店舗閉鎖及び貸出基準の見直し等を行ってきたが減収推移に歯止めがかからず、同22年3月期では営業収入52億7754万円まで落ち込んだ。事業環境の急激な変化に対応するため、様々な施策を講じたものの、営業貸付債権の減少に伴う利息収入の減少や超過利息の返還要求のさらなる増加により、先行きの事業継続に著しい支障が生じることが予想されることから法的手続きを申請した。
(株)サンシティ(仙台市青葉区一番町4-6-1、登記上本社:東京都中央区八丁堀1-5-1、設立平成4年2月、資本金75億1054万円、米川淳社長、従業員129名)は、9月26日仙台地裁に民事再生法の適用を申請した。監督委員には斉藤睦男弁護士(ひろむ法律事務所、仙台市青葉区大町1-2-1、電話022-223-2905)が選任された。負債総額は248億8800万円。
同社は、東北地区を中心に自社開発の分譲マンション「サンデュエル」「アーバンシティ」「アヴァンツァーレ」シリーズを企画・販売した不動産会社。平成16年3月には不動産流動化事業にも参入した。同16年9月に東証2部へ上場、同18年6月に東証1部へ指定替えを果たした。青森、静岡、甲信越、北陸をカバーして業容を拡大、同19年12月期には売上高577億8500万円、当期純利益24億6600万円を計上した。同20年5月には首都圏における事業強化等を目的に東京へ本社を移した。
しかし、平成20年秋頃からはサブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱や原油・原材料価格の高騰を背景とする建築費の高騰などで経営環境が悪化した。また、不動産関連融資の厳格化や信用収縮の影響を受けて、特に不動産流動化事業において成約済みの案件が破談となるなど信用性が著しく低下し、同20年12月期の決算では売上高224億8500万円と落ち込み、当期純損失127億9200万円と大幅赤字に転落した。
こうしたなか、地方衛星都市を中心とする分譲マンション事業に特化する方向性を打ち出し、再建を目指してきたものの、平成21年12月期は68億3300万円、同22年12月期は3億400万円の赤字を余儀なくされ、同23年9月に入ってから債権額に満たない価額にて担保資産を売却したことから、再び債務超過に陥った。同21年5月以降、金融機関への元本返済猶予を中心とした返済条件の緩和を行うとともに、負債圧縮のため担保資産を売却するなどして凌いできたが、同23年10月以降はさらなる返済猶予の承諾を得ることは極めて難しいことから、民事再生の手続き開始を申請した。なお、9月26日にフィンテックグローバル(株)(本社:東京都港区、玉井信光社長)とスポンサー契約を締結した。
(株)下村産業(枚方市山之上北町5-1、設立昭和49年10月、資本金5000万円、下村潔社長)は、11月22日に大阪地裁へ破産を申請、12月14日破産手続開始決定を受けた。破産管財人は大石武宏弁護士(北浜法律事務所・外国法共同事業、大阪市中央区北浜1-8-16大阪証券取引所ビル、電話06-6202-9548)。負債総額は208億5600万円。
同社は昭和26年創業で、土地を購入しその後自社で造成して販売することを主業務とするほか、土木や解体・建築工事なども手がけていた。官公庁や地元の有力企業を対象に営業地盤を形成し、昭和59年3月期には年商46億960万円を計上していた。
しかし、平成9年3月期には業況厳しく4億8684万円の赤字を計上し債務超過に転落、同12年頃から公共工事削減に加え工事単価が下落し一層業況は厳しくなった。同16年頃からは大阪府内で大規模な土地を取得し宅地造成を手掛けようとしたものの、造成許可が下りず多額の棚卸資産を抱えるようになった。これ以降、資金繰りが逼迫、同21年3月期には年商も6億7195万円にとどまるなど業績は低迷。その後の業況改善も期待薄と判断し、今回の措置を採った。
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