京葉銀行 取引先の増収増益ランキングで全国トップ ~「取引先の成長と課題解決」、担当者インタビュー (前編) ~
「α」のマークで親しまれている京葉銀行(TSR企業コード:329005227、千葉市)。東京商工リサーチ(TSR)の「2024年・全国メインバンク調査」 によると、同行をメインとして取引する企業の約4割(39.1%)が増収増益を達成し、増収増益ランキングでトップに輝いた。
千葉県内を中心に、取引先の課題解決で業績を伸ばす京葉銀行。取り組み概要や秘訣などを融資部、法人営業部、経営企画部の各グループリーダーに聞いた。
―京葉銀行について
1943年に県内3社が合併し、千葉合同無尽株式会社として設立した。1951年に千葉相互銀行に商号を変更し、1989年に普通銀行への転換と同時に京葉銀行に商号を変更した。
京葉銀行のシンボルである「α(アルファ)」マークは、アルファの文字が描く重なりと上に鋭く延びるラインから、人と人とのきずなと、出発点から無限に伸びていく未来を表している。常にプラスαを提供し続ける銀行になりたい思いも込めている。また、今年4月には企業理念を「プラスαの価値を提供し、地域の豊かな未来をともに築く」と再定義した。
京葉銀行の概要は、千葉県内に118店、東京都内に3店、インターネット支店が1店舗ある。2024年3月末で、預金残高が5兆4,536億円、貸出残高が4兆2,114億円だ。
グループには、ファンド運営やM&Aなどを手掛ける(株)京葉銀キャピタル&コンサルティング(TSR企業コード:131063472)、クレジットカード業の(株)京葉銀カード(TSR企業コード:320372677)、信用保証業務の(株)京葉銀保証サービス(TSR企業コード:320649555)の3社がある。
京葉銀行(TSR撮影)
―企業への支援体制は
千葉県内の企業が抱える課題が多様化、高度化しており、求められるニーズの発掘も重要で、その解決を実行してきた。
具体的には、事業性評価を通じて顧客の成り立ちから商流の把握、現在から将来までの目標を共有し、パートナーとなれるよう取り組んできた。特に、将来に向けた支援を大切にしており、未来伴走シートというツールを利用しながら対話を行い、現在と将来像のギャップを把握し課題を共有している。
銀行が一方的に顧客を評価したり、課題解決策を検討するだけではなく、ツールで課題を共有し、一緒に検討することが重要と考えている。顧客自身に課題解決の意識を持ってもらい、銀行と共に能動的な取り組みを促している。
―増収増益ランキング1位に輝いた
企業経営サポートグループは支店の担当者と同行訪問し取引先の経営改善をサポートする部署で、コロナ禍のタイミングでは影響を細かくモニタリングしてきた。ゼロゼロ融資を中心に債務が膨らみ、将来的な返済負担が増加する取引先が多くあると認識していた。
キャッシュフローと年間返済額を比較した時、ゼロゼロ融資等の調達でキャッシュフローより年間返済額の方が多くなる逆転の状況が続くと、資金不足が発生し、さらに借入が増える負の循環に陥ってしまう。
これをいかに未然に防ぐか、あるいは早期に改善させられるかに着目し、ゼロゼロ融資先への支援を強化した。
例えば、ある程度キャッシュフローを確保できている取引先には、保証協会の制度などを利用した上で年間返済額をキャッシュフローの範囲内に収める「リバランス」スキームを構築し、実施してきた。これにより資金繰りに余裕が生まれ、前向きなことに資金を使えるようになる。リバランス後の伴走支援を含め、この取組みにかなり注力した。
もちろん、業況の回復が遅れ、キャッシュフローを確保できていない取引先には、収益力の回復を最優先とするべく、可能な限り迅速にリスケジュールを実施している。その際は405事業による改善計画策定のほか、中小企業活性化協議会など外部機関と随時連携し、対応してきた。
こうした取り組みが、業績回復に結び付き、成果につながったと思っている。
―別の視点での1位の背景
販路拡大や事業承継、デジタル化、SDGsなど課題や悩みを抱えている企業は多い。そういう課題解決のため、法人営業グループ内にソリューション営業チームを作った。営業店でトップセールスマンだった7名が、支店の担当者と一緒に外回りして、悩みや課題を一緒に聞いている。若手の渉外などは経験が少なく、普段聞き出せなかったニーズを汲み取ることができたため、顧客満足度の上昇につながったと思っている。
また、資金繰りサポートやシローン、リファイナンスのほか、規模の大きな設備投資への資金需要など、顧客の課題解決をトップセールスマンがフォローしたことで高度な提案ができ、生産性の向上などにより顧客の増収増益につながった可能性がある。
◇インタビュー参加、各部リーダー(敬称略)
管理グループ・古田晶大(前列左から1番目)
企業経営サポートグループ・北島裕大(前列左から2番目)
経営企画グループ・長谷川翔(前列左から3番目)
審査グループ・石田和也(前列左から4番目)
法人営業グループ・関口紘史(後列左から1番目)
地域振興グループ・青山俊介(後列左から2番目)
法人営業グループ・中村和博(後列左から3番目)
広報グループ・石毛良平(後列左から4番目)
(続く)
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年10月31日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)