北央信用組合・渡辺欣也理事長インタビュー ~お客様の繁栄が地域の繁栄、北央の繁栄へ~ 2024/07/02
―北央信用組合の概要と営業戦略について
当組合は、1952年11月に札幌で塩とたばこを小売りする専売業者が集まり、業者自身の手による金融機関として、「札幌専売信用組合」を設立したのが始まりだ。「札幌専売信用組合」という名称から、専売業者のみが利用できる組合との印象が強かったため、1982年8月に「専和信用組合」に名称を変更した。その後、1999年12月に共同信用組合(札幌)と千歳信用組合の事業を譲り受けたことから、一般公募により名称を「北央信用組合」に変更した。更に2002年5月に旭川商工信用組合の事業、2006年2月には室蘭商工信用組合の苫小牧地区の事業を譲受した。最終的に5つの信用組合が合併したのが現在の北央信用組合だ。現在26店舗にて営業展開しており、2022年11月には母体である札幌専売信用組合の創立から70周年を迎えた。
こうした背景があるので、営業エリアは道央、道北地区において広範囲に亘っている。中でも、主な営業エリアは札幌とその近郊、千歳・苫小牧、旭川とその近郊、日高地区だ。支店所在地によって事業環境が大きく異なる。地域の信用組合なので、主な顧客は地域の中小企業、零細企業、そこで暮らす人々だ。また、中小企業といっても、家族経営や従業員数名程度の小規模な事業者が多い。営業地域が広域で、都市部と農村部にまたがり、地場産業もバラエティに富んでいて多様性がある点が強みである半面、単一のビジネスモデルの展開が難しい側面もある。
基本的には営業エリア別に営業方針を分けることなく、その地域に根差した質の高いサービスを提供して地域と共に発展する、存在感のある地域金融機関を目指している。主力営業エリアは札幌地区だ。札幌だけで預金残高の約半数、貸出残高は3分の2を占める。地域への貢献度合いを預金や年金といった「シェア」として捉えると、札幌以外の地区のシェアが高い。融資残高の構成として札幌地区は賃貸物件関連の融資残高が半数以上を占めている。競合という面では札幌地区が激しいが、同じく地域密着型の信金が存在する地方では、競合というよりも力を合わせて地域経済の支えに貢献できればと考えている。
北央信用組合・渡辺欣也理事長
―「事業継承」問題を抱える企業は多い。認識と対応策は
事業継承については、当組合へのご相談も増加している。当組合では「地域支援部」を設置しており、今年度は人員を補強し、連携先との協力を含め体制の強化を図っている。事業継続にあたっての経営課題に直面する事業者に対しては、課題解決に向けた自助努力の支援を進めていくことが重要だ。ただ、当組合の限られた人員や組織だけでは、顧客事業者の経営面における実効性のある支援の取り組みが困難なこともある。当組合の事業者支援については項目を厳選して(経営改善支援や資金繰り支援を中心に)行い、その他の分野については外部機関との連携を強化する取り組みを進めている。外部専門機関との連携においては、各種支援機関等との連携を図っているが、特に日本政策金融公庫と中小企業診断協会北海道とは早くから業務連携による支援の取り組みを進めている。中小企業診断協会北海道とは、経営改善が必要な顧客事業者に対し、専門的知見を有する中小企業診断士と連携してより高度な経営支援を行うことを目的に、2015年に業務提携した。また、2023年11月には日本政策金融公庫と「事業継承支援M&A」の分野でも連携合意した。これらを含め、深度ある支援体制を構築しながら、今後も顧客事業者の実情に合わせた支援の取り組みを講じていきたい。
―道内では現在、道央圏を中心に大型プロジェクトが進行中だ
当組合のお客様は、下請けとして参画される事業者が多い。どんなに大きなプロジェクトであっても、結局は、我々のお客様であり現場に関わる中小事業者に支えられていると認識しているが、現状、原材料費の高騰や人材確保等で苦戦している中小事業者が多いことも事実だ。プロジェクトの成功に向けても、そういった中小事業者を支援していくことが信用組合の役割と認識している。
不動産関連融資については札幌市内が主体だが、ボールパークが建設され、北海道医療大学が当別から移設予定の北広島や、次世代半導体を製造するラピダス進出の影響を受ける千歳・苫小牧エリア、また、江別や石狩など、地価高騰を要因に賃貸物件建設が札幌近郊にまで拡がっており、当面は資金需要が続くだろう。投機的な案件はお断りしており、資産形成のお手伝いを主眼としている。
―金融機関にはコンサルタントとして顧客の様々な課題解決が求められる時代だ
新型コロナウイルスの流行後、いわゆる「ゼロゼロ融資」等コロナ融資の実行額は300億円を超えた。当時は、顧客の資金繰りの安定を最優先に支援したが、現在、その融資の返済も本格化してきており、加えて原材料費・エネルギー価格等の高騰や円安、人出不足等の諸問題もあり、アフターコロナにおいても、厳しい環境に置かれている事業者が多く存在する。このような顧客事業者を下支えすることが、自らの顧客基盤の存続にも繋がる。
2014年に日本政策金融公庫と「創業支援」「経営改善支援」「事業再生支援」の分野にて連携合意した。事業継承については、当組合へのご相談も増加している。当組合では「地域支援部」を設置しており、今年度は人員を補強し、連携先との協力を含め体制の強化を図っている。事業継続にあたっての経営課題に直面する事業者に対しては、課題解決に向けた自助努力の支援を進めていくことが重要だ。ただ、当組合の限られた人員や組織だけでは、顧客事業者の経営面における実効性のある支援の取り組みが困難なこともある。当組合の事業者支援については項目を厳選して(経営改善支援や資金繰り支援を中心に)行い、その他の分野については外部機関との連携を強化する取り組みを進めている。外部専門機関との連携においては、各種支援機関等との連携を図っているが、特に日本政策金融公庫と中小企業診断協会北海道とは早くから業務連携による支援の取り組みを進めている。中小企業診断協会北海道とは、経営改善が必要な顧客事業者に対し、専門的知見を有する中小企業診断士と連携してより高度な経営支援を行うことを目的に、2015年に業務提携した。また、2023年11月には日本政策金融公庫と「事業継承支援M&A」の分野でも連携合意した。これらを含め、深度ある支援体制を構築しながら、今後も顧客事業者の実情に合わせた支援の取り組みを講じていきたい。特に「創業支援」は多数の実績があり当組合の強みとなっている。創業支援の融資は少額なものが多く時間もかかるが、こういった方々を支え、地域の企業を育てることが当組合の役割であると考えている。
また、当組合は2021年9月にSDGs宣言をした。SDGsに対する社会的な要請が高まるなか、関心はあっても宣言を公表していない取引先事業者が多く存在していた。当組合の中心的な顧客層である小規模事業者においては、自力での策定が困難なケースも多く、顧客支援の一環としてSDGs宣言策定支援サービスの取り組みを始めた。顧客企業価値の向上を支援するために無償での取り組みとし、当組合のメイン先を中心に希望のあった事業者を支援している。SDGsへの関心が高まっている状況でもあり、今後も支援を希望する取引先にはサービス提供を継続する。
―今後の方向性について
協同組織金融機関である信用組合は、そもそも、地域の小売同業者や個人などが組合員となり、資金を出し合い、相互扶助の理念に基づき、設立された経緯がある。当組合も元々は専売品(塩、たばこ)を小売りしていた方々の組合である。専売制は廃止され、塩とたばこの小売店はコンビニエンスストアになり、資金需要はなくなった。ただ、当組合の存在が不要になったわけではない。営業地域には当組合を頼りにしてくれる中小零細企業があるからだ。信用組合には「最後の砦、駆け込み寺」として果たす使命もある。「預金は信頼の証、貸出は貢献の証」と言われるが、北央信用組合はこれまで4つの信用組合の事業譲受を経験し、業容を拡大してきたことにより、当組合を頼っていただける中小零細企業のために貢献するとともに、地域の皆様の信頼を醸成してきたとの思いもある。「十年一昔」と言われるが、今は「三年一昔」かもしれない。中小零細企業を取り巻く環境は日々変化し、北央信用組合もそれに対応していかなければならない。そのためには、私どもも効率性・収益性を高めて80年-100年存続し続けることが前提だ。2020年度の決算で不良債権処理のために創業以来初の赤字決算となったが、その後札幌地区を中心とした不動産関連融資が順調に伸びて、昨年度は過去最高益を計上するなど、現在の経営状況は安定している。
お客様のニーズに迅速かつ的確に対応できる体制を拡充するためにも、財務基盤の充実が必要と考えている。収益の柱となる不動産関連融資に大きな比重が掛かるが、今後はコンサルティングなどによる収益の多様化を図り、経営の効率化や経営資源集中のための店舗体制の見直しを進めることで、経営体力を確保し、これまで以上に質の高い金融サービスを提供していきたい。
地域にしっかり寄り添い、「お客様の繁栄が、地域の繁栄、北央の繁栄へと繋がり、役職員とその家族の幸せへと輪が広がっていくことを願って」、身の丈に合った「健全にして堅実な経営」を今後も進める。
2024/07/02
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