全国企業倒産状況

2024年12月の全国企業倒産842件

12月の企業倒産 2年連続で800件超、負債が1.8倍に大幅増加


 2024年12月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が842件(前年同月比3.9%増)、負債総額は1,940億3,000万円(同87.9%増)だった。
 件数は、4カ月連続で前年同月を上回り、11月に続いて800件台に乗せた。また、12月としては3年連続で前年を上回った。また、12月としては3年連続で前年を上回った。
 負債総額は、2カ月連続で前年同月を上回り、2024年では10月(2,529億1,300万円)に次いで3番目の高水準となった。12月では2年連続で1,000億円を超えた。負債1億円未満が629件(前年同月比2.7%増)と全体の74.7%(前年同月75.5%)を占め、小規模倒産が中心の推移に大きな変化はない。ただ、1億円以上5億円未満170件(前年同月比10.3%増)、10億円以上19件(同46.1%増)と、中堅規模の倒産が増えたことで負債が膨らんだ。
 
 2025年は金利上昇が現実味を帯び、今後は財務戦略が重要さを増す。それだけに債務軽減や価格転嫁が困難な企業、収益にボトルネックを持つ企業は厳しさが増す可能性が高い。
 また、コロナ関連支援終了で事業継続が難しい企業、技術や商品に強みを持たない企業、人材育成が遅れた企業など、将来に向け自立的な事業推進が難しい企業も厳しくなるだろう。
 私的整理の法制化の関連法案が通常国会に提出予定だが、中小企業が対象の私的整理ガイドラインも倒産増の流れを止めるのは難しいだろう。2025年の企業倒産は、物価高と人手不足が大きなトリガーとなり、休廃業・解散に引きずられる形で2024年を上回る可能性が高い。

企業倒産月次推移


・形態別件数:破産が769件で、構成比は91.3%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが25都府県、減少19道県、同数3県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比74.7%、100億円以上は6カ月連続で発生
・業種別件数:繊維工業、金属製品製造業、老人福祉・介護事業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比は88.7%
・「新型コロナウイルス」関連倒産は184件(同251件)で、2024年累計は2,794件
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比は2カ月連続で100.0%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 10産業のうち、6産業で前年同月を上回る

 2024年12月の産業別件数は、10産業のうち、6産業で前年同月を上回った。
 最多はサービス業他の287件(前年同月比7.4%増)で、3カ月連続で前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は34.0%(前年同月32.9%)。
 また、建設業168件(前年同月比3.0%増)と製造業89件(同8.5%増)が4カ月連続、農・林・漁・鉱業11件(前年同月比37.5%増)が2カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。円安を背景とした原材料や資材などの価格上昇だけでなく、人材確保のためとコストアップが資金負担に影響を及ぼしている。このほか、小売業90件(同4.6%増)が2カ月ぶり、不動産業27件(同35.0%増)が3カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。 
 一方、卸売業90件(同5.2%減)が15カ月ぶり、情報通信業33件(同13.1%減)が9カ月ぶり、運輸業45件(同8.1%減)が2カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。金融・保険業は前年同月と同件数の2件。

2024年12月 産業別倒産状況

主要産業倒産件数推移

主なサービス業他 倒産状況


主なサービス業他 倒産月次推移

地区別 9地区のうち、6地区で前年同月を上回る

 2024年12月の地区別件数は、9地区のうち、6地区で前年同月を上回った。
 四国25件(前年同月比66.6%増)が、6カ月連続で前年同月を上回った。四国では、小売業と不動産業を除く8産業で前年同月を上回った。このほか、近畿250件(同13.1%増)と九州64件(同6.6%増)が4カ月連続、中部100件(同2.0%増)と北陸19件(同18.7%増)が3カ月連続、関東299件(同6.7%増)が3年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 一方、中国28件(同22.2%減)が3カ月連続、北海道19件(同42.4%減)が2カ月連続、東北38件(同25.4%減)が6カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。

2024年12月 都道府県別倒産

※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.(株)BALM/東京都/中古自動車販売ほか/831億円/民事再生法
2.(医)社団美実会/東京都/医療脱毛クリニック経営/72億9,500万円/破産
3.(株)ADI.G/石川県/歯科医療器具販売ほか/65億500万円/民事再生法
4.一般社団法人八桜会/東京都/医療脱毛クリニック経営/51億7,500万円/破産
5.西宝土地開発(株)/大阪府/不動産業/28億7,000万円/破産

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

脱毛サロン「ミュゼプラチナム」3度の運営会社が変更 ~「船井電機」倒産余波の真相~

船井電機(株)が破産開始決定を受けて以降、脱毛サロン「ミュゼプラチナム」への関心が高まっている。これまでの運営会社の変遷をまとめた。

3

  • TSRデータインサイト

脱毛サロン・ミュゼプラチナム、「全役員解任」の実態 ~ 運営会社MPH・三原孔明社長 単独インタビュー ~

脱毛サロン大手「ミュゼプラチナム」の全役員解任の報道を受け、運営会社の三原孔明社長ら幹部が2月17日、東京商工リサーチ(TSR)の単独取材に応じた。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の破産、高裁が最高裁への抗告許可認めず

破産か再建か――。迷走が続く船井電機(株)(TSRコード:697425274)の破産抗告事件に進展があった。船井電機の登記上代表の原田義昭氏ら(以下、抗告人)は1月31日に最高裁へ破産事件の抗告許可を申し立ていたが、東京高裁は2月13日、抗告を許可しないことを決定した。

5

  • TSRデータインサイト

本番を迎えた「金利ある世界」~ 貸出金利1%を巡る攻防 ~

2024年3月、日本銀行が8年ぶりにマイナス金利政策を解除した。その後の2024年7月、2025年1月と相次いで政策金利を引き上げた。ただ、金融機関は政策金利の引き上げを見越し、ひと足早く預金金利と貸出金利の引き上げに動き出している。

TOPへ