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「TSR REPORT」のここに注目 ! -資金情報、業績情報-
「TSR REPORT(国内企業調査レポート)」の中で、資金の調達や支払いに関する情報が記載されているのが「資金情報」、過去の業績推移やその説明が記載されているのが「業績情報」の項目です。当該企業のお金の流れを把握することは与信管理において非常に重要であり、その内容の変化を見逃さないよう十分な注意が必要です。
事業活動の結果である決算数値とお金の流れの重要性
企業の状況を確認する際、定量情報でわかりやすいのが決算数値推移の把握です。 企業は年に1回、会社の成績を株主などのステークホルダーに報告することを目的に決算を行います。この決算で出た数値は、毎年定点での絶対的な数値として比較が可能なため、企業の状況が見た目でもよくわかる内容となっています。ただ単純に数値だけを比較するだけでなく、複数の決算に関する数値を総合的に読み解くことが企業をチェックするうえで非常に重要となります。また決算数値とともに重要なのがお金の流れです。企業にとって最も重要な資産はなんといっても「現金=キャッシュ」であり、営業活動・設備投資・資金調達の3つの視点でどのように資金需要が発生し対応しているかを把握することが重要です。
資金調達 -「金融機関との取引状況」を把握する-
主要な取引を行う金融機関順に取引内容を記載しています。「固定預金」「長期借入金」「短期借入金」「割引手形」と、当座借越などの「その他」の各金額を記載した項目の他、担保に供した資産の種類、そして調達した資金の使途について記載されています。なお、金融機関以外の第三者からの借入を行っている場合もここに記載されています。 ※固定預金は定期預金と定期積立預金の合計額です。
「資金調達」判断のポイント -資金調達状況の把握で重要な情報とは-
経営を行ううえで、自己資金で事業資金が賄えればよいですが、大半の企業が外部資金を利用することで、事業に必要な資金を賄っているのが現状です。外部資金の中で多く利用されているのが、金融機関からの借入金です。国内にはメガバンク、地方銀行、信用金庫などさまざまな金融機関があります。TSR REPORTでは金融機関ごとに担保状況や調達資金の仕様用途を記載しています。これらの情報を把握することは無理のない借入をおこなっていないかを知る点で重要となります。また金融機関以外からの借入について、グループファイナンス(効率的な資金調達)を目的として関連会社から資金を調達している場合は資金面の判断はグループ全体を包括しての判断が必要となりますが、その他の第三者から資金調達を行っている場合は、金融機関からの借入が何らかの理由によりできない状態になっているケースが考えられます。調査先企業の置かれている状況判断に加え、必要に応じて資金調達先の企業についても情報収集を行ってください。
補足ポイント -資金調達状況把握のための補足情報-
資金状況を把握するための補足情報としてチェックしたいのが、仕入先への「支払条件」、販売先への「回収条件」、そして「焦付債権」です。以前と比較して支払条件が長期化していたり、支払条件と回収条件の比率に乖離があり、特に回収条件が支払条件に比べ長期化している場合は注意が必要です。「焦付債権」は、金額だけでなくその状態にも注目し、償却が済んでいるのかなど、影響度合についても確認してください。資金状況 -「営業収支状況・設備投資状況・資金調達状況」を把握する-
取材により入手できた情報、財務データ、資金調達力などを総合的に分析し営業、設備、資金調達の3つの軸で、現在どのような理由でどの位の資金需要が生じており、その資金需要に対して、どのように手当をしているのかを企業実態に即して記載しています。
「資金状況」判断のポイント -資金状況の詳細を把握!-
現在の経営において「キャッシュ・フロー=資金の流れ」は非常に重要です。それが端的にわかるのが、利益が出ているのに資金不足のために倒産してしまう「黒字倒産」です。表向きは売上・利益が好調でも、実は事業を継続するための資金が不足しているために倒産してしまうケースが少なくありません。この資金状況を適切に把握することが、与信管理上のポイントとなってきます。例えば、同じ業種・業態の会社であっても、各社が抱える資金需要は様々です。資金繰りは、業務上の回収と支払=経常収支で賄われることが通常ですが、売上不振、在庫過多等の要因で入金が細ると、支払資金不足を引き起こす恐れがあります。また、上述の「黒字倒産」のように売上が伸びていても、過度な投資により本業を圧迫しているケースもあることから、売上が伸びている企業であっても、必ず資金状況を確認するようにしましょう。
業績推移 -「業績推移」を把握する-
事業活動の結果である決算数値の情報が記載されています。決算期ごとの売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、減価償却額、配当総額、自己資本比率、期末従業員といった業績に関する重要な情報が最大6期記載されています。
「業績推移」判断のポイント -業績の大枠を把握!-
業績推移を把握するには、単純に売上や利益があがっているから良いといった安易な判断ではなく、複数の指標を総合的に把握しての判断が重要となります。例えば、前年に対し大幅に売上高が増加している場合は、毎年の経常的な売上ではなく、翌年分の売上を前倒しで計上した可能性がありますし、利益金が大幅に増加している場合は保有している不動産の売却益で増益の可能性もあります。また売上高が増えていても売上利益率が低下している場合は、競合との競争が激しく単価を下げて販売していたり、販売に伴う経費がかさんでしまっている可能性も考えられるため、その原因を探る必要性も出てきます。
まとめると、売上高や利益金の絶対的数値および各比率などの財務指標を総合的に確認することと、その業績に至った詳細について把握する必要があります。
調査先企業が業績を確保するためにどのような活動を行い、どのような結果を得たのかが記載されているのが、次の「業績説明・営業現況・裁判情報」です。
業績説明 -「業績説明・営業現況・裁判情報」を把握する-
「営業現況」には、「今後の見通し」と「事業等のリスク」があり、「今後の見通し」では本事業年度の事業の方向性・目標、「事業等のリスク」は調査先企業の事業継続を脅かすリスクがあった場合の概要について説明しています。「裁判情報」はTSR REPORTならではの項目で、調査の中で判明した係争や、広く公開された情報で調査先企業に影響があるものが記載載されています。
「業績説明」判断のポイント -企業の過去・現在・未来を把握!-
業績説明を把握するには、企業の過去・現在・未来の状況を把握することが重要です。特にこの分野は、一般的に企業が自力で調査することが難しいにも関わらず最も必要とされている情報です。具体的には、現在のサービス内容、商品・製品の特性、取引先の良否、営業基盤の安定度、社員の質、営業力、代表者・経営陣の経営能力など、表面的にはなかなか見えてこない企業の状況となっており、調査員のプロの目で判断した内容が記載されています。
上述の「業績推移」と合わせ、各決算期の状況を確認する中で、例えば赤字であったとしても、その「理由」を把握するようにしましょう。企業によっては、戦略的に赤字を計上する場合もあり、理由は様々です。もちろん、本業の不振により赤字計上を余儀なくされている場合もあります。決算数値のみ見るだけでは無く「なぜ、そのような決算数値になったのか?」という視点から企業分析をおこなう事が、調査レポートを読み解く「鍵」となります。
また、「裁判情報」は企業の事業活動へ影響を及ぼすものが含まれていることがあり、取引上の重要な判断が必要になった場合に見逃せない重要な項目です。